VCT 2021 Stage 1 トルコ語配信が最高視聴者数13万人を記録、VCT 2021 EMEA Stage 3でトルコ代表のSuperMassive Blazeが準優勝を収めるなど、活躍の幅を広げるトルコ。現在トルコではVALORANTの人気が急上昇していますが、なぜトルコでVALORANTがこれ程まで人気なのか、そしてなぜ強いのか、トルコのeスポーツ関係者40人へインタビューを行った記事がUpcomerより公開されています。以下、インタビューより一部抜粋した文章を引用しています。全文は原文からご確認ください。

秘めたポテンシャルとゲームに対する情熱で大成功を収めたトルコ

トルコでは、eスポーツは文化であり、生活様式であり、VALORANTは単なるゲームではなくコミュニティにとって非常に重要な存在まで来ています。トルコは、VALORANTの視聴者数が最も多い地域であり、最も熱狂的で筋金入りのファンがいると言っても過言ではありません。

しかし、なぜトルコではeスポーツがこれほど盛んなのでしょうか。Upcomerは、トルコのプロ選手、配信関係者、eスポーツチームのSNS担当者、熱狂的ファンなど、40人以上の人物に取材を行い、その真相に迫りました。

トルコにおけるFPSの人気

VALORANTは、トルコのコミュニティを魅了した最初のeスポーツタイトルではありません。これまでFPSを中心とした多くのゲームが、何十年にも渡りトルコの熱狂的ファンを獲得してきました。

Oxygen Esportsに所属するXiSTOUは、「トルコにはPC文化があり、誰もがPCでゲームをプレイしますが、その中でもFPSが特に人気があります。今のトルコでは、30代のユーザーが友達とCounter Strike 1.5を定期的にプレイする様子も見ることが出来ます。今では、若者の多くがLeague of Legendsをプレイしていますが、トルコではFPSの愛が深いのです。」と語ります。

CS:GOも同様で、Space Soldiers*には多数のファンが存在し、XANTARES、woxicなど、トルコ出身の選手は国民的英雄として見なされています。そのため、既にFPSの文化はコミュニティに浸透しており、現在のCS:GOの不安定な状況を考慮すると、ファン、選手がCS:GOからVALORANTへ移行することは自然な流れでした。

*Space Soldiers:2015年に設立し、2018年に解散したCS:GOチーム。トルコチーム初の世界大会準優勝を経験するなど、トルココミュニティの人気を後押しするチームとなった。

また、多くのユーザーがCS:GOからVALORANTに流れる理由として、その多くが経済的・社会的な問題を1つの要因として挙げています。

トルコのとあるファンは、「トルコ人の多くのユーザーはゲーミングPCを購入したり、安定したインターネット回線でプレイすることができません。このような事情から、多くのユーザーが無料のオンラインゲームを好んでプレイする傾向があります。」と語ります。VALORANTは多くのユーザーにとって「無料ゲーム」であるといった理由だけで、気軽にプレイできるゲームとなるのです。

加えて、「VALORANTは無料のゲームですが、トルコのユーザーはゲームにお金を払うことを嫌う傾向があります。私たちは海賊版のゲームをプレイする事で知られていますが、VALORNATは基本プレイが無料ですので、それも人気がある理由の1つだと思います。」と語ります。

現在、トルコは経済的に苦戦しており、2021年7月にはインフレ率が過去最高を記録するなど、金融危機が多くのゲーマーに影響を与えています。その渦中でもFPSを楽しみたいとユーザーが思う場合、VALORANTが人気タイトルになることは自然な流れなのでしょう。

Riot Gamesへの信頼

更に重要なことは、Riot Gamesがトルコのコミュニティと大きな信頼関係を築いていることです。そのため、VALORANTはトルコで最も注目されているタイトルになりました。

とあるファンはこう語ります。「私の個人的意見では、FPSはトルコで最も人気のあるジャンルです。しかし、eスポーツと言えば『League of Legends』が頭に浮かびます。これは、Riot Gmaesがトルコのコミュニティへ行った多大な努力の賜物です。CS:GOでは大会の賞金、組織面が安定していませんでしたが、彼らはLeague of Legendsでそれらを払拭し、確立されたコミュニティの形成に成功しました。そのため、Riot GamesがFPSを作ると聞いて、コミュニティはとても幸せな気持ちになりました。」

Riot Gamesがトルコのeスポーツシーンのインフラ構築に尽力したこともあり、ファンは同社が展開するFPSに信頼を寄せていました。そのため、カジュアルユーザーだとしても、ただの1視聴者としても、他のeスポーツタイトルより「VALORANT」に注目することに迷いはありませんでした。

また、Riot Gamesがトルコ最大の都市であるイスタンブールにサーバーを置くことを決定したことに感銘を受けたという人もいます。これにより、インターネット環境が悪いユーザーも、より容易に、気軽にプレイできるようになりました。

トルコのプロチームGalakticosに所属するyTは、「CS:GOの頃は、スポンサーや組織よりサポートをあまり受けていませんでしたが、Riot Gamesは常に私たちとコミュニケーションを取り、耳を傾けてくれます。これらは私たち選手にとって非常に重要なことでした。」と語ります。

トップレベルで競い合う選手が豊富に存在することもトルコで人気を博す理由ですが、競技シーン関係者によると、Riot Gamesの開発者が大きく関わっているようです。

「Riot Gamesは、同社のゲームにおける大規模なトルコ語への翻訳作業を2012年より行っています。」

そう語るのは、トルコのVALORANT Champions Tourで公式キャスターを務めるVlad。Vladは、「選手、組織は既に何千ドルもの給与を受け取っていると聞いています。CS:GOでありば、月に100ドル貰えればラッキーだったというのが正直なところです。それにより選手たちはプロを諦めてしまい、別の仕事をしながら活動を続けるか、引退するかのどちかでした。」と語ります。

トルコにおけるCS:GOとVALORANTの賞金総額の差は大きく、トルコで最も権威あるCS:GO大会の1つである「ESL Turkey Championship Winter 2021」は賞金総額は3,800ドル(約40万円)で開催され、1位は2,300ドル(約25万円)を獲得します。

一方、VALORANT Champions Tour 2021 Stage 2 Challengers 1だけでもの賞金総額は18,446ドル(約200万円)で、優勝者には9,521ドル(約100万円)が贈られました。

Masters 1では、優勝したFutbolistに3万ドル(約300万円)が贈られ、大会には全8チームが出場しましたが、最下位チームでも2,500ドル(約27万円)を手にしています。

その結果、トルコのCS:GOシーンの殆どの選手がVALORANTへ移行し、多くの選手たちがゲームで初めて給与を得る環境を構築することができました。XANTARES、woxicなど、世界のCS:GOシーンで戦う選手でない限り、CS:GOで生計を立てることはあまりにも厳しい道なのです。

Oxygen Esportsに所属するXiSTOUは、「これが優秀な選手、プロ志望のアマチュア選手がVALORANTへ移行してきた理由の1つです。Riot Gamesのようにコミュニティに密接に接するゲームは、大きな可能性を秘めていると誰しもが思っていて、更にはトルコで人気が高いFPSであるので、シーンが良い方法へ動いたのです。」とコメントしています。

BBL Esportsのコミュニティへの貢献

トルコのVALORANTの人気は、BBL Esportsを抜きにしては語れません。このチームは、wtcM、Kendine、Uthenera、Oidemirelなど、トルコで最も高い知名度を持つストリーマーによって設立されました。wtcNだけでもTwitchで240万人のフォロワー、Twitterでは36万人のフォロワーを抱えます。

Upcomerが調査したところ、取材を行った40人のうち、38人がトルコでVALORANTが人気を博している理由の1つに「BBL Esports」を挙げています。BBLの創設者たちは、既に巨大なファンを抱えていましたが、彼らがVALORANT部門を立ち上げると発表した時、そのコミュニティ全体をVALORANTへ連れて行ったのです。一夜にして、VALORANTの巨大で熱狂的コミュニティが誕生したのです。

2021年3月時点で、BBL Esportsの公式試合の配信は140万時間の視聴時間を達成していました。Masters 1では13万人の同時視聴者数を記録し、最も視聴された試合のトップ5は全てBBL Esportsの試合でした。更にStage 2で、BBL EsportsとLiquidが対戦した際、ヨーロッパ地域で過去最高となる23万人を記録しました。

そのため、BBL Esportsが出場する試合は、視聴者数が急増することが保証されているのです。彼らのファンは何があってもお気に入りのチームを応援するため、試合があれば配信を見ているのです。

また、XiSTOUは「BBL EsportsはVALORANTが人気となる方程式を作った一部に過ぎない。」と語り、人気チームの牽引と共に、その他のチームも負けずと切磋琢磨する激しい競技シーンを構築したことを更なる理由の1つとして考えています。

XiSTOUは、「CS:GO時代には、Dark Passage、Space Soldiersなど、ファンから大きな期待を寄せられたチームがありましたが、実際には成功には至りませんでした。しかし、VALORANTでは、ヨーロッパ、世界と戦えるという点で、ファンは非常に興奮し、競技シーンへ期待を寄せてくれます。」とコメントしています。

なぜトルコのファンは情熱的なのか

トルコのファンは、eスポーツ業界でも最も熱狂的ファンを持つと言われていますが、VALORANTはその中でも更に情熱的ファンが多いようです。

XiSTOUは、トルコで人気のスポーツ「サッカー」を例に挙げ、こう語ります。「どのeスポーツでも、スポーツでもトルコはこういう国なのです。フェネルバフチェSKとガラタサライSKのファンの間にある緊張感とライバル意識は、私たちトルコ人がどのように成長してきたかを表しています。私たちは愛国心が強く、それが文化なのです。」

数々の大会へ出場してきたXiSTOUは、「トルコ人は、SNS上では選手へ酷い態度を取ることもあります。しかし、それは彼らがプロを期待し、全ての選手へ常に全力のパフォーマンスをするようプレッシャーをかけているからです。EMEAのプレイオフでも、応援してくれるファンから素敵なメッセージをたくさん頂きました。」と語り、実際にたくさんの応援メッセージが届いたことを明かしています。

取材に答えた40人のうち39人が、トルコは最も情熱的ファンがいる地域と答えており、中には「愛国心がトルコ人のDNAに刻まれているかもしれない。」と答える回答者もおり、溢れ出る愛国心のせいか、自分の好きなチーム、選手を応援し、その熱意を披露せずにはいられないのです。

17 コメント

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  1. 日本だとVCTの賞金200万は少ないとか言われてるけど
    トルコだとCSGOの5倍も貰えるなんてと喜ぶレベルなのか…

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    1. vctは全地域、Challengers予選から賞金が発生しているんだけど、何故か日本は賞金が発生するのはプレイオフだけ。ほんま謎よね

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    2. 単純に予算が分配されなかっただけでしょ日本地域に。LoLも最初そうだったので世界大会で日本地域が強いってことをRiot側にアピール出来れば色々改善されるよ。最初から賞金低い!金だせ!は我儘。

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    3. 他はRIOR開催のところ日本だけRAGEに委託してるからじゃないの?

      そもそもアピールが足りないという話なら
      全地域でてて日本だけ出ないってのは流石におかしいというか説明にならない
      17万弱同時視聴者いて世界大会だって一国で2枠も貰ってるし
      世界で見たら日本以下の地域なんていくらでもある

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    4. LoLの初期と違って今はもうesportsの日本市場って結構デカいからね

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    5. 視聴者数、プレイヤーベース共に世界トップレベルだと思うけど、委託元によって賞金と変わるんだったら悲しいなぁ
      あと勘違いしている人いるけど、EMEA Stage 3のトルコ予選はChallengersごとに賞金があって2.1万ドル×2で総額は合計4.2万ドルくらい。
      日本はなぜかプレイオフだけ賞金があって、Challengers 1、2で賞金が無いのがおかしい。

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    6. 日本だけじゃなくてNAはNerd Street Gamers、KRはAfreecaTVに制作運営を委託してるけども…。普通に予算がおりなかったのとアマチュアチームも出る大会だから賞金額あまり大きくならないように調整したからでしょ。日本の法律ではアマチュアにあまりにも大きな賞金を出すの結構面倒くさいのよ。全チームがプロチームという証明やってればいけるけど。勝ち上がったCRもZETAも賞金あってもなくても変わらんだろう。

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    7. シージはアマチュアも出場できるオープン大会が数千万で開催されているけどどうなん。

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    8. 開催するのは自由。なにか言われた時にちゃんと説明出来るように準備して、大会主催者が責任を取れる形にしておけば問題ない。

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  2. おもしろい記事だった! トルコがこんなにe-sportsが盛り上がってる地域なんて知らなかったな

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  3. Counter-Strike 1.5が誤植かと思ったらマジで1.5だった
    MODだからファイルさえあればプレイできるもんな

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    1. あまり裕福ではない地域(他意はない)では海賊版がめちゃくちゃ出回ってるのでブラジルやロシアでは今でもCS1.6大会開催されてるくらいだ

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    2. 1.6じゃなくてあえて1.5をプレイしているところが凄い

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  4. ちなみにゲームの大会にでかい賞金出すのは法律で云々って今まで散々言われてたけどただの勘違いで全く問題ないらしいよ

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    1. 残念ながら全く問題はなくはない。認められているのはプロとしての報酬として賞金を出すのが問題ないという形なので、高額な賞金を出す場合はその大会に出ている選手が客観的にプロとしての基準を満たしているかどうかが重要になっている。例えば誰でも参加出来る小学生大会の賞金を1億とかにすると消費者庁から刺される。あくまでもその大会に出ている選手がきちんと整備されたルールの元で予選を勝ち抜き、一般大衆にプロとしての技術を魅せる事で得られる報酬という立て付けにしなければならない。
      〇〇らしいよで適当なことを書いてはいけない。

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    2. https://jesu.or.jp/wp-content/themes/jesu/contents/pdf/terms/holding-manual20210527.pdf
      あんまり問題なさそうだけど

      valorantは無料ゲームだし課金による優劣もないから 
      景品表示法にもかからなくない?

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    3. 人に適当なことを云々言う前にソース付けろよとは思う

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